2008年10月08日

【号外】J.D.パワーさんが発表した「2008年日本自動車セールス満足度調査」結果に自問自答するの巻

過日、私がスポットコラムニストを務める自動車関連ニュースのメールマガジン「自動車ニュース&コラム/2008年9月25日号」で、以下の記事を見つけました。

◆日本での新車セールス満足度調査、「レクサス」が2年連続で首位。JDパワー

レクサスは730ptで、2位のBMWを73pt離した。「店内が快適」「車両がよ
い環境で展示されている」など、店や展示状況への評価が特に高かった。

販売店の総合的なセールス満足度に影響を与えるのは5つのファクターで、
「セールス担当者」(46%)、「購入条件」(19%)、「営業体制」(18%)、
「店舗施設」(10%)、「商品展示」(7%)となっている。

3位はVW(630pt)、4位はM.ベンツ(622pt)。ホンダと日産が600ptで5位。
7位はスバル(599pt)、8位はマツダ(598pt)、9位のトヨタは597ptで、平均
の594ptをかろうじて上回った。スズキは550ptで最下位。

「顧客にとって、新車が自分の手元に来る納車の日は『心待ちにした日』で
あり、最もうれしい瞬間。これに対し、セールス担当者は新車の契約(受注)
の時が最も気持ちが高揚する瞬間であり、納車の際は他の商談に意識が向い
ていることが多いのではないだろうか」と指摘している。
http://www.jdpower.co.jp/press/pdf2008/2008JapanSSI_J.pdf
http://www.asahi.com/car/news/NGY200809250010.html
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080925/158528/
http://www.jdpower.co.jp/

私は、本記事と参照リンク先を精読するや否や、以下二つの疑問を抱きました。

<1>なぜ、レクサスは、販売店の対応の満足度がダントツに高いにも関わらず、販売面で苦戦しているのか?

<2>納車の際、営業マンさんの多くが<緊急時の対処方法>と<購入後のサービス担当者>を筆頭に「丁寧に」説明しない主因は、彼らとお客さまの「心理的かい離」以外にあるのではないか?(※)

(※)該当箇所の原文「納車時の対応が満足度を左右する」

成熟化が進んだ自動車業界では、商品/サービスなどあらゆる面において他社との差別化が年々難しくなっている。販売店においても、商談から納車までのプロセスを確実にこなすだけでは顧客の満足度が高まらず、対応の質が問われるようになってきた。本調査で販売店対応と満足度の関係をみたところ、特に納車時の説明を顧客が納得/理解できるまで実施した場合に満足度が高まる傾向にあることが明らかとなった。

納車時の説明では、車の操作方法、取扱説明書の内容といった車の使用にあたり必要となる項目と、納車後の点検、保証、サービス担当者、緊急時の対処方法といった車の維持/保有に関わる項目を聴取している。各項目の説明状況と満足度の関係をみると、「丁寧に説明があった」と顧客が感じた場合に総合満足度は向上し、なかでも「緊急時の対処方法」、「購入後のサービス担当者」について「丁寧に説明があった」場合の総合満足度は、業界平均を80ポイント以上上回った。満足度の高いブランドではこれらの説明実施率が高い傾向にあるものの、本調査で聴取した全ての項目で「丁寧に」説明があった割合は業界全体で23%に留まっている。各ブランドにおける納車対応の実施状況には大きな改善の余地があるといえる。

一般に納車プロセスは顧客の気持ちとセールス担当者の気持ちの乖離が大きくなるプロセスと考えられる。顧客にとって、新車が自分の手元に来る納車の日は“心待ちにした日”であり、最も嬉しい瞬間である。これに対し、セールス担当者は新車の契約(受注)の時が最も気持ちが高揚する瞬間であり、納車の際は他の商談に意識が向いていることが多いのではないだろうか。この結果は、納車時の顧客の気持ちにセールス担当者がきちんとした納車説明で応える必要があることを示しており、今後の生涯顧客化に向けたスタートを切るためにも現場での対応改善が望まれる。

■J.D.パワーアジア・パシフィック2008年9月25日付プレスリリース「2008年日本自動車セールス満足度(SSI)調査」から引用
http://www.jdpower.co.jp/press/pdf2008/2008JapanSSI_J.pdf

つきましては、今号も前号に引き続き号外とさせていただき、本メールマガジンの趣旨により近い<2>について自問自答し、あなたさまとシェアしたいと思います。
(<1>についても、近い将来、自問自答してみたいと思っています。)
何卒ご了承いただきますようお願い申し上げます。(礼)
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

納車の際、営業マンさんの多くが<緊急時の対処方法>と<購入後のサービス担当者>を筆頭に「丁寧に」説明しない主因は一体何でしょうか。

結論から申し上げると、私は、営業マンさん又はその上司である店長さん、営業部長さん、社長さんのいずれか又は全員が、以下の事項のいずれか又は全てを心得ていないから、だと思っています。

【1】「会社(店舗)の売上&収益を安定させるには、顧客(※)に商品を再購入いただくことが欠かせない」、と心得ていないから。
(※)新車や中古車など、これまで何らかの商品を購入してくださったお客さまのこと。

【2】「顧客に商品を再購入いただくには、購入時満足を最大化することが欠かせない」、と心得ていないから。

【3】「購入時満足を最大化するには、絶えず、“その”お客(=only the customer)さまの喜びと不安を斟酌し、喜びを増幅するに足る活動、及び、不安を払拭するに足る活動を案出→実行することが欠かせない」、と心得ていないから。

【4】「納車後、お客さまは、喜びを抱くと同時に、翻って、<購入した新車が使いこなせない不安>と<購入した新車が突然故障する不安>を想起する」、と心得ていないから。

もちろん、会社(店舗)として納車プロセス(活動)を詳細かつ明確に定義し、その中に<緊急時の対処方法>と<購入後のサービス担当者>を説明するプロセスを挿入し、定期的にロールプレイングを行えば、該当活動の実施率は向上します。
但し、これによって向上するお客さま満足は、限られるでしょう。

なぜでしょう。
それは、つまるところ、納車の時であれ何時であれ、お客さまが心底喜び、心底助かるのは、営業マンの活動そのものでなければ、活動から得られる情報でもなければ、活動の中から伝わってくる「自分を唯一のお客(=only the customer)として認知、斟酌してくれている感」だから、です。

人は、思いがある行動か、機械的な行動かを直感的に見抜きます。
実施率が低い該当行動を機械的に実施しても、お客さまが心底喜んだり、心底助かったりすることはありません。

また、私は、「丁寧に」か否かは置いといて、納車の際に<緊急時の対処方法>と<購入後のサービス担当者>を含めて説明していない営業マンさんは殆ど居ない、と経験上考えています。
次の商談が頭をよぎるのもゼロではないでしょうが、大きな影響はありません。

なぜ、お客さまは、納車の説明があったにも関わらず、「無かった」とお感じになるのでしょうか。
これまた経験上、私は、理由は大きく二つあると考えます。

一つ目の理由。
これは、調査結果でも触れられていますが、「該当活動の内容&技術が、お客さまを理解、納得させるレベルに達していないから」、です。

「緊急時は、私宛へ、いつでも気兼ねなくご連絡ください」とJAFの連絡先を示しながら一方的に言われても、お客さまは「はぁ」ですし、早晩忘れます。(苦笑)
また、「サービスマネージャーはこちらの○○になりますので、私が不在の(緊急)時は、この者へご相談ください」と車検証入れの中の名刺を指で指しながら一方的に言われても、これまたお客さまは「はぁ」ですし、早晩忘れます。(苦笑)

二つ目の理由。
これは先述の【4】に起因する、「該当活動が、お客さまの納車時ならではの心情、即ち、『ハレの日ならではの不安』を斟酌していないから」、です。

人は、良いことを体験すると、同時に高確率で悪いことを想起します。
たしかに、納車の日は、お客さまにとって、喜びに満ち溢れた、正にハレの日です。
が、ハレの日であるがゆえに、喜びを失う怖れを想起し、不安を抱く日でもあったりします。

納車後、新しいカーライフを始めたお客さまは、一体どんな不安を抱くのでしょうか。
そうです!
「自分にとって最良の車を買った気はしているが、本当に使いこなせるだろうか。もし使いこなせなかったら、気分的にも金銭的にもショックでかそうだな・・・」といった旨や、「うまく使いこなせそうな気はするが、いきなり故障したりしないだろうか。機械である以上故障は不可避だが、もし放置プレーをくらったら、気分的にも用便的にもショックでかそうだな・・・。」といった旨の不安です。

余談ですが、人は、自分が得をするのをサポートしてくれた人よりも、自分が損をするのを防いでくれた人に、大きな満足と強い信頼を抱きます。
購入満足度の高低が、納車説明の出来に大きく左右されるのは、つまるところ、お客さまが、納車後に『ハレの日ならではの不安』を高確率で抱くから、です。

そろそろ、まとめに入りたいと思います。(笑)

納車の際、営業マンさんの多くが<緊急時の対処方法>と<購入後のサービス担当者>を筆頭に「丁寧に」説明しない主因が上述の【1】から【4】だとすると、解決するには一体何が欠かせないのでしょうか。

まずは、営業マンさんに加え、営業マンさんの上司である店長さん、営業部長さん、社長さんが、納車を購入時満足向上の好機と心得ることです。
そして、該当活動の不実施理由である先述の【1】から【4】を反面教師的に心得ることです。

その後、「納車時、お客さまの『ハレの日ならではの不安』の払拭し、お客さまへ<自分を唯一のお客(=only the customer)として認知、斟酌してくれている感>を与えるにはいかにすべきか」仮説を立てながら案出し、実行→検証していくことです。
お客さまへ「自分を唯一のお客(=only the customer)として認知、斟酌してくれている感」を与えることができた納車説明は、高確率で「丁寧」と評されるはずです。

ちなみに、私は、「ブレーキやタイヤは一皮剥けるまで利きが悪く、一定期間安全運転をすることが不可欠である」旨などを記述した「納車直後運転注意書」を自作し、お客さまの車に対する理解度に即した納車説明を企画、実施したりしました。
この企画は、お客さまだけでなく、店舗スタッフにも好評だった、と自負しています。(笑)

そのほか欠かせないのは、商談時にお客さまとツーウェイコミュニケーションを重ね、信頼関係を構築することです。
さもなければ、仮に新車を購入いただけたとしても、納車説明をじっくり聞いていただけないのはもちろん、商品を再購入いただけることもあり得ません。

これについては、【号外4】で「雑用論」を唱えてくださった、デキる店長さんのkazzさんから過去頂戴したコメントにて理解を深めていただけると幸いです。(礼)

当時僕が行っていた基本的な(店頭)販売方法は、押し付けでした。(笑)
お客さまの考えを無視し、お客さまから情報を引き出すことなく、「今日だったらいくらにしますから、何とか買ってください」と。(笑)
当時僕は、お客さまから(見積りを作成するよう)言われた車を安く販売することが、営業マンである自分の仕事であり、結果的にお客さまの得になる、と考えていました。

(中略)

(店頭営業活動で)一番変わったのは、お客さまと話をよくするようになったことです。
(購入)ニーズを把握しようと、来店アンケートを使ってお客さまと話をよくするようになった結果、お客さまが希望していたのとは違う車を提案し、買っていただいたことも結構あります。

(中略)

お客さまと話をよくするようになった結果、販売後のお客さまとの関係がかなり良くなりました。
今のところ、代替については数字は出ていませんが、点検や一般入庫については確実に数字に表れています。



※関連紙一重
デキる営業マンは、納車の際、お客さまに、胸を張って、「○○さん!良い車をお買い求めになりましたね!」と言う。

※関連号外
販売店対応の満足度がダントツに高いレクサスが販売面で苦戦している理由(1)

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