2011年02月23日

【号外】報道記事「販売のトヨタに忍び寄る不安/『プリウス』人気で足腰が弱る」に対する雑感

自動車販売店営業マンの生命線は「足腰」だと言われます。
なんでも、足腰が弱ると、自動車販売店営業マンは「デキない営業マン」になるようです。

この考えは、「営業は足だ」という考えに拠るものです。
自動車販売店営業マンたるもの、「お客さまの自宅にノーアポを厭わず通い、お客さまに車(商品)と自分を圧迫的に売り込んで然るべき」であり、お客さまの自宅にノーアポを厭わず足繁く通える「足」がデキる営業マンの要件だ、というのです。

しかし、自動車販売店営業マンの生命線は、本当に「足腰」なのでしょうか。
また、本当に「営業は足」、すなわち、「お客さまの自宅にノーアポを厭わず通い、お客さまに車や自分を圧迫的に売り込んで然るべき」なのでしょうか。

私の考えは「ノー」です。
自動車販売店営業マンの生命線は、「足腰」ではなく「頭脳」です。
「営業は頭」、すなわち、「対象のお客さまの心情や事情、ひいては、顕在的及び潜在的ニーズを正確かつ迅速に理解/斟酌し、“その”お客さまが助かる情報やもてなしを提供して然るべき」です。

今、お客さまは、日々殆ど不在の上、忙殺状態にあります。
悪印象や不信感を抱いている営業マンは論外ですが、好印象や信頼感を抱いている営業マンでも、自己都合だけで通われると迷惑です。

また、お客さまは、車に限らずどのような商品も、自分のニーズに一番フィットするモノを、自分のペースで、自分の納得がいった時に購入したいとお考えです。
自分のニーズ、ペース、納得がないがしろにされ、車と営業マン自身を圧迫的に売り込まれるのを、殊のほか嫌います。

「営業マンたるもの、お客さまを店舗で『待つ』のではなく、自宅へ積極的に『攻め』に行って然るべきだ」と主張する人が居ます。
しかし、これは、店頭営業の理解不足と訪問営業の過剰期待です。

たしかに、店頭営業のプロセス/ステップの中には「待機」があります。
でも、これは、「来るか来ないか(連絡してくるかこないか)わからないお客さまをただ単に待つ」のではなく、「予め対象のお客さまの心情や事情、並びに、顕在的及び潜在的ニーズに応え、来てくださって然るべきお客さまを待つ」ことです。
お客さまの自宅を不在&書置き覚悟で通いつめるより、お客さまはよほど助かります(=営業活動として有効です)し、費用(投資)対効果(収益)も優れています。

それに、この主張はそもそも誤っています。
お客さまは「攻める」対象(笑)ではなく、「助ける(=満足度の高い購入&カーライフを支援する)」対象です。
なぜなら、お客さまが営業マンに一番求めているのは、「愛車の購入&維持支援機能」だからです。
申し遅れましたが、以上の内容は、以下の報道記事に対する雑感です。
不遜ながら、本記事のご紹介と併せて、のたまわせていただきました。(笑)
トヨタならびにトヨタ以外の営業マンさん、店長さん、営業部長さん、社長さんのご参考になれば幸いです。(礼)


★販売のトヨタに忍び寄る不安 「プリウス」人気で足腰が弱る

トヨタ自動車のハイブリッドカー(HV)「プリウス」の販売好調が続く一方で、トヨタ系販売会社の多くの幹部たちが顧客管理に対する危機感を強めている。

「座っていても売れる状況が続きすぎた。売れるのはいいが、お客さまの家を一度も見たことがない者が増えている」という状況にあるためだ。

販売員は外に出かけなくともノルマを達成

プリウスの一人勝ちを横目で見ていた輸入車勢は「プリウスユーザーは大票田。数年後には大きな草刈場になる」と、プリウスから輸入車に乗り換えるユーザーは多いとみる。

自動車販売業界内では、トヨタ系販社が自社保有客であるプリウスユーザーを守りきれるかどうかが注目されている。

トヨタ系販社では、エコカーの減税と補助金の効果で2010年の前半はプリウスを指名買いする来店客が後を絶たず、販売員は外に出かけなくともノルマを達成した。そのせいで、新車を売った相手の家を訪問する活動を十分に行えなかったという反省がある。

「販売のトヨタと言われたようにお客さまとの結び付きが強く、アフターフォローの良さもトヨタのウリの部分だった」という販社の幹部たちは、プリウス購入者と販社の結び付きは弱いと感じているわけだ。

2008年のリーマンショック以降、販売減に苦しんでいたトヨタ系販社の救世主となったのは、2009年5月のフルモデルチェンジを機にトヨタ初の全チャンネル併売車となったプリウスだ。その販売台数は減税と補助金の効果やトヨタ、トヨペット、トヨタカローラ、ネッツの4チャンネルで販売したことなどにより、09年、10年と2年連続で登録乗用車の車名別販売台数トップを獲得した。

ところが人気の高さが販売の現場に混乱を招いた。需要に対して供給が追いつかない状況が続いて人気がさらに高まったことや、排気量のダウンサイズやHVに興味を持つ新規ユーザーが増えたこと、さらに10年6月頃からはじまったエコカー補助金終了前の駆け込み需要などが、販社の来店客数を急激に増大させた。これがリーマンショック後に販売効率の向上に取り組んでいた販売現場に誤解を生み出した。

販売員は外回りなど地道な販売活動を行わなくとも販売目標は達成できた。さらに外回りをしたくとも補助金終了前の駆け込み需要期には平日も朝から来店があり、外に出られない状況となっていた。

2012年から輸入車に移行するユーザーが増える?

しかも販売が急増したことで、新車を納車した後の「調子伺い」が確実にできたかどうかに疑問を持つ幹部もいる。プリウスをはじめとする新車購入者に対するアフターフォローが不十分な時期があったわけだ。

その一方で価格帯の中での競合車や実走行燃費などを気にする新車購入検討者の中には、プリウスとフォルクスワーゲン(VW)「ゴルフ」「ポロ」、BMW「1シリーズ」などを比較するユーザーも存在する。このためHVに満足できなかった、お金に余裕のあるユーザーが、すでにプリウスから同じ価格帯のゴルフなどの輸入車に乗り替えるケースも出てきている。

VW勢をはじめとする輸入車の販売店の多くは「日本の道路のすべてが渋滞しているわけではないので、実走行燃費ならプリウスに負けることはない」とし、新車購入から3年後の初回車検到来時に車を買い替えるユーザーが多いことに着目。「プリウスユーザーの中には新物好きや人とは違った車に乗りたいと思って購入したユーザーがいる。輸入車に乗りたいユーザーは多いはずで、これだけプリウスが売れすぎると他の車に乗り替えたくなる」。早ければ 2012年あたりから輸入車に移行するユーザーが目立つようになるとみている。

※2011年2月19日付J-CASTニュースから転載
http://www.j-cast.com/2011/02/19087963.html?p=all



※関連号外
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